年金と配当がある親は確定申告すべきか
親の年金に加えて、株式の配当がある場合、
確定申告をすべきかどうかで迷うことが多いです。
年金だけなら、原則として申告は不要です。
しかし、配当があると話は変わります。
口座の種類や課税方式によって扱いが異なります。
NISAであれば申告は不要です。
特定口座(源泉徴収あり)でも、そのままにすることはできます。
ただし、確定申告をすることで、すでに引かれている税金が戻る場合もあります。
一方で、住民税や後期高齢者医療の保険料に影響する可能性もあります。
単純に「還付があるから申告する」とは言えません。
本記事では、具体的なモデルケースをもとに、
申告の要否と課税方式の選択を実務目線で整理します。
【この記事で整理すること】
・年金と配当がある場合、確定申告は必要か
・NISA・特定口座・一般口座の違い
・総合課税と申告不要制度の判断基準
・住民税・保険料への影響
※本記事は令和7年3月時点の制度に基づいています。
今回のモデルケース
本記事では、次の条件を前提に整理します。
佐藤さん(仮名)
・75歳の年金受給者(給与所得なし)
・名古屋市在住(政令市モデル)
・公的年金110万円
・上場株式配当15万円(特定口座・源泉徴収あり・NISAではない)
・繰越損失なし
・後期高齢者医療制度加入
この条件で、「申告は必要か」「どの課税方式が合理的か」を検討します。
年金と配当の所得計算のしくみ
佐藤さんの収入は「年金」と「株式配当」の2つです。
ここでまず整理したいのは、
収入と所得は同じではないという点です。
税金は「収入」にかかるのではなく、
控除後の「所得」にかかります。
収入と所得の違い
収入とは、実際に受け取った金額です。
所得とは、その収入から法律で定められた控除を差し引いた、課税対象となる金額です。
たとえば会社員であれば、給与収入から給与所得控除を差し引いたものが給与所得になります。
年金も同じ構造です。
年金の所得
年金収入:110万円
65歳以上の場合、公的年金等控除の最低額は110万円です。
110万円 − 110万円 = 0円
年金の雑所得は0円になります。
配当の所得
配当収入:15万円
特定口座(源泉徴収あり)の場合、すでに
150,000円 × 20.315%
= 30,472円
の税金が差し引かれています。
総合課税を選択すると、この15万円が所得として合算されます。
合計所得金額
年金所得 0円
+ 配当所得 15万円
= 合計所得金額 15万円
ここから基礎控除を差し引きます。
※令和7年3月時点では、基礎控除は所得水準に応じて設定されています。
佐藤さんの所得は基礎控除額を下回るため、
課税所得は0円となります。
その結果、源泉徴収されていた約3万円は還付対象になります。
総合課税と申告不要制度の違い
配当の課税方法は大きく3つあります。
・申告不要制度
・総合課税
・申告分離課税
今回のケースでは、実務上の判断は
「申告不要のままにするか」
「総合課税を選び直すか」
です。
申告不要制度
特定口座(源泉徴収あり)であれば、確定申告は不要です。
メリット
・手続き不要
・住民税や保険料への影響が出にくい
デメリット
・源泉徴収された税金は戻らない
総合課税
配当を他の所得と合算して再計算します。
佐藤さんの場合、課税所得は0円となるため、
約30,000円が還付されます。
比較整理
| 項目 | 申告不要 | 総合課税 |
|---|---|---|
| 手続き | 不要 | 必要 |
| 還付 | なし | あり |
| 住民税影響 | なし | 条件次第※ |
| 保険料影響 | なし | 条件次第※ |
※配当を合算することで合計所得金額が増えるため、
所得水準によっては住民税や保険料に影響する可能性があります。
佐藤さんの水準では影響はありません。
住民税と後期高齢者医療保険料への影響
住民税は所得税とは別に計算されます。
住民税の基礎控除は43万円です。
合計所得 15万円 − 43万円 = 0円
このケースでは、総合課税を選んでも住民税は増えません。
後期高齢者医療保険料は
・均等割
・所得割
で構成されています。
所得割の基礎は「総所得金額等」です。
佐藤さんの所得水準では、保険料への影響は生じません。
実務での判断基準
年金と配当がある親の確定申告は、次の順で整理します。
① 配当はどの口座か
② 合計所得金額はいくらか
③ 基礎控除内に収まるか
④ 住民税・保険料に影響するか
【判断フロー】
配当はNISAか?
→ はい:申告不要
→ いいえ:次へ
合計所得は基礎控除内か?
→ はい:総合課税で還付検討
→ いいえ:住民税・保険料を比較
重要なのは、「還付があるかどうか」だけで判断しないことです。
税金・住民税・保険料は連動しています。
全体構造を見て選択することが、子世代の実務的な支え方です。
今回のモデルケースでは、
総合課税を選択することで所得税の還付を受けられ、
住民税や保険料への影響も生じません。
次の記事では、
「年金と配当はいくらまでなら税金がかからないのか」を具体的に整理します。